焼き魚の塩に適している塩(1971年発売の本より) | 橋本三奈子のSalt Revolution(わじまの塩に魅せられて)

焼き魚の塩に適している塩(1971年発売の本より)

昭和女子大学生活科学部教授で調理学の大家であった杉田浩一先生の著書に、『こつの科学―調理の疑問に答える―』という本があります。
専売公社の精製塩が出る前の1971年に発売された本で、調理や料理研究家の方はご存じで、参考にされていた方も多いと思います。
2003年に亡くなられた後、この本は2006年に新装改版され、今でも販売されています。


ここに、以下のような記述があります。焼き魚には、マグネシウムなどを含む塩が適している、という話です。


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「焼き魚の塩」

焼き魚に食塩を使うのは、魚の表面の蛋白質の熱凝固をすすめ、形のくずれを防ぐのが目的ですが、
不純物として含まれるマグネシウムやカリウムの塩類は、塩の主成分である塩化ナトリウムよりも
このような働きが強いのです。

したがって、これらの不純物の少ない食卓塩や特殊精製塩よりも、1%程度のにがり分を含む普通の食塩の方が焼き魚には適しているわけです。

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微量のミネラルは、どんなに微量であっても、身体をととのえる大事な働きをしているということは、テレビで、「あるある大辞典」などで取り上げられるようになったり、サプリメントや化粧品のコマーシャルでみかけるようになってきたから、みなさんもご存じと思います。


最近では、ナトリウムとカリウムが半々の塩まで発売されていますが、当時、マグネシウムやカリウムというミネラル類は、塩にとって「不純物」とみなされていたのです。


確かに、マグネシウムが多い塩は苦味があり、塩を作った後に残るニガリは漢字で「苦汁」と書くほどなので、嫌われていたのです。

そのために、いかに精製するか、ナトリウムの純度を高めるか、という技術開発がされ、塩化ナトリウムだけの精製塩ができてきて、(もちろん大反対する料理人もいらっしゃいましたが、)それなりに受け入れられてしまった、というわけです。


古い教科書で習った料理関係の方は、今でもこのような感覚を持っていらっしゃる方も見受けられます。
精製塩全盛時代に、料理を習った方は、素材が変わっていること、流通が変わっていること、塩の概念が変わっていることを心する必要があります。


難しくなりましたが、最後まで読んでくださって、ありがとうございます。





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